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信楽の登り窯窯元    「宗陶苑」の日記。      焼き物製作、商品紹介、日々の日記などなど・・・


by soutouen

焼成の雰囲気(酸化焼成・還元焼成)


焼き物の焼成方法には酸化焼成(OF)・還元焼成(RF)の二種類があります。
厳密にはその中間の中性焼成というのもありますがややこしくなるのでここでは省きます023.gif

酸化焼成は窯の中の空気中に一定量の酸素がある状態での焼成を言い、
焼成時には土や釉薬に含まれる金属分が酸素と結合する化学変化がおこります。
電気窯での焼成は炎やガスが発生しませんし、地球上の空気中には充分な酸素がありますので
普通に焼くと酸化焼成になるわけです。

それに対し還元焼成とは意図的に炉内を酸素不足にし焼成する事で、
物が燃えるには酸素が必要であり、その酸素が空気中に少ないので
焼成時に土や釉薬から酸素を奪っていく化学変化がおこります。

ごくおおまかな説明ですが、
酸化と還元では焼き上がってくる作品の色合いが違うというのは分かってもらえたかと思います。
例えば銅釉ですと酸化で青系の色(織部釉に代表される)ですが、
還元ですと赤系の色(辰砂)になります。
外で長期間放置されていた10円玉を拾うと青みがかっていた事はありませんか?
10円玉は銅で出来ていますので、あれは酸化しているわけですね026.gif

そしてここからが本題ですが、登り窯のような窯は薪を窯にくべて焚くわけですが、
薪をくべて燃えている状態は還元ぎみ、燃えきって炉内に酸素が満ちてくると酸化状態ですので
当苑の場合、おおよそ15分間隔で割木をくべますので
15分おきに酸化状態と還元状態が繰り返されて焼成されます。
よっていわゆる「ど酸化」や「ど還元」にはなりませんが
薪の分量や種類や太さ、くべるタイミングなどで、
酸化気味や還元気味に焚いたりする事は可能な訳です。
これを焼成の雰囲気といいますが、
もちろん意図できない部分もあり、
部屋(間)ごとに酸化雰囲気や還元雰囲気に出たり、
同じ部屋(間)でも場所により、雰囲気が違って出てきたりもするところが
薪窯のコントロールできない部分であり、おもしろみでもあります039.gif

では、実際に今回焼いた三つ足酒器セットで違いを見てみましょう。
どれも同じ土で同じ窯、外側は無釉の焼締め・内側はトルコ青釉(銅釉)にて焼いておりますが
つめる部屋(間)や場所を違えてあります。

焼成の雰囲気(酸化焼成・還元焼成)_f0014970_11173811.jpg
まずは酸化雰囲気。
釉はトルコ色に青く発色し、火色は比較的明るめに出ております。


焼成の雰囲気(酸化焼成・還元焼成)_f0014970_1120921.jpg
こちらは還元雰囲気。
同じ釉ですが別の物のように赤くなっております。
火色も酸化の物と比べ落ち着いた渋い色味です。


焼成の雰囲気(酸化焼成・還元焼成)_f0014970_11223119.jpg
こちらは火袋にて焼成したもの。
青い部分と赤い部分、さらに紫の部分がございます。
はっきりとは分かりませんが中性ぎみなのでしょうか…。
この部屋はいつも他の部屋とは大幅に違った雰囲気に焼き上がります。

このようにどれが良い・悪いではなく、それぞれの好みで
「還元気味のこの色のが好きだな」とか
「酸化・還元いろいろで組合せましょう」なんて言いながら器選びをするのも楽しいですよ。
「三つ足酒器セット」   ¥5,000~(焼き味に応じて)   

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by soutouen | 2010-03-02 11:37 | 陶芸 | Comments(0)